さくらインターネットさんを過剰に擁護するつもりもないけど、幸いにして長年利用しているにも関わらず特に大きなトラブルに遭遇したこともないので、どちらかというと好意的な印象を持っています。一方で、ここ数日話題になった醜聞はまあそういうこともあるよなという感想も持ってます。
一応、事の発端と公式のアナウンスにもリンクしておくかな。ただこの事案に関しては「9:1」くらいでさくらさんの方が悪い印象でもある。
一般にさくらインターネットさんというと「サポートがクソ」とか「安かろう悪かろう」という評価が多いような気はして、まあユーザ視点からすると事実かなという印象はあります。ギリギリいい言い方をすると、値段相応というか、付き合い方を間違えなければいい事業者だと思ってるというところ。あるいは営業担当者やスタッフに技術レベルのムラは結構あるけど、高い人は高いと感じています。
ちなみに確認してみたらさくらインターネット歴は13年半だった。最初はレンタルサーバから始めて、2013年からはVPSに移行して現在に至ってる感じ。ドメイン管理もさくらのドメインを使ってるけど、これは次の更新のタイミングで転出しようかなと思ってる。主な使い道はこのWordPressが動いてるWebサーバとメールサーバとしての利用で、半分以上趣味の技術的検証を兼ねてる感じ。無駄にIPv6やTLS1.3に対応してたり、DKIMやDMARCに対応してみたりとかそういうことをやってる。あとそれ以外にも仕事上の付き合いもちょっとあって、石狩データセンタにもオープン直後ぐらいに見学に行ったことがあります。
さくらインターネットに何を求めるというか、ブロガー系に人気のエックスサーバーでもなく、エンジニア系に人気のAWSでもなく、何故さくらを使うのかというところが比較検討の上明確でないと、結果的に期待外れとかサポートがクソだという評価に繋がってしまうのではないかなと思います。
つまり「OSやネットワークレベルでの高い自由度」と「サポートはほぼ不要」という2点を求めるのであれば、さくらのVPSやさくらのクラウドはエックスサーバーやAWSと比較して優位かなと考えてさくらを使い続けています。特にさくらのVPSはコンパネのデキはそこそこ良くて、建てたサーバにグローバルIPアドレスがv4とv6の両方で割り当てられます。これが月額585円からなので、あまり複雑なことをしないスタンドアロンなサーバを建てるのであれば十分なコストパフォーマンスです。ただOSの管理はもちろんファイアウォールなどやセキュリティ対策を自前でやらなければいけないので、人によってはそれはデメリットではありますが、逆に自分でやりたいというニーズであれば大きなメリットです。
さくらのクラウドはAWSと比較するとそれほど大きなメリットはなくて、円建てで決済されることと課金単位がわかりやすいというのが数少ないメリットではあります。AWSは固有のテクニックが多くて慣れるまでつらいというのがデメリットかなとは思います。それに比べればシンプルさ・自由度と古式ゆかしく設計や運用を自力でやりたいという場合のニーズにはまあまあマッチするかなというところ。
話題になってる専用サーバは位置づけがちょっと中途半端で、OS以上のレイヤーはユーザ側で面倒を見なければならないというのはVPSやクラウドと変わらずではありますが、ハードウェア以下のレイヤーはさくら側に任せざるを得ないというところがデメリットではあります。規模やコスト感などにもよりますが、コロケーションを利用してサーバそのものを自前で持ち込んだ方が責任分界などの面でもわかりやすいかなと思います。あえて「VPSじゃ不足だけどコロケーションするほどでもない、なので専用サーバ」というニーズはややニッチなのではないかと思います。高火力シリーズならまだちょっとニーズは理解できますが、どちらにせよ営業担当を付けてもらってコンサルしてもらったり、SIer的なサポートをお願いするレベルで、通常のレンサバと同じ電話サポートにはちょっと荷が重い使い方です。
かといってハードウェアトラブルとは無縁になるというわけではないし、むしろ定期的なリプレイスも必要だしもちろんセキュリティ上の理由からOSのアップグレードだって必要です。2012年に新規受付を停止してるサービスで2017年にハードトラブルに遭遇したということであれば、サーバの移動をオファーされるよりはそもそもハード交換をオファーされても然るべきじゃないかと思ったりするんですがどうなんでしょうね。なんかこの辺りにユーザとさくら側のディスコミュニケーションというか、認識がズレまくってるのが悲劇の始まりだったんじゃないかと思ってしまいます。元々の投稿者の素性がわからなくて、平常時のさくらとの関係がどうだったのかがわからないので何とも言えないところではありますが、まあまあの「太客」とは思いますし営業担当がいるような感じはあるので、作業計画の立案から含めてもうちょっと事前にどうにかできる余地はあったのではないかと感じます。
で、まあさくらの専用サーバは使ったことはないんですが、値段の割に微妙だなぁという印象は持ってます。VPSやクラウドを使うか、コロケーションにしてハード的にはベンダー保守をちゃんと付ける方がトータルでのありがたみは大きいんじゃないかな。
コロケーションに関してもあまりさくら側に複雑な技術サポートを求めないのであれば全然ありですかね。ロケーションも(公開はしてませんが)まあまあいいし、事前の取り決めは多少必要ですが最低限のオンサイト作業はお願いできたりします。石狩に比べると東京や大阪のセンターはファシリティがやや古くなってきてるとか、自社ビルではないので外的要因が存在しうるとか、そういうのはありますがまあその辺りはさくらさんも認識はしているようなので、基本的にはVPSとかクラウドは石狩にシフトしていきたいんだろうなとは感じます。
結局のところ、月額1万円を超えるようなサービスであれば求める基準も高くはなりますが、少なくとも現行のサービスにおいてはさくらインターネットの中でも専用サーバはコンサル前提のようなところがあるので、通常のサポート窓口やDCのオペレータ対応だけではさもありなんというのがこの騒動を眺めていた感想です。数年前、少なくとも石狩データセンタ以降で2017年より以前くらいの時期から、さくらインターネットさんはコンサルとかSI的な方向に力を入れてる印象はあったので、もうちょいどうにかならなかったのかとは思います。さくらの内部で各部署が連携して、ユーザに説明できていればこのような事態がそもそも発生しなかったでしょうし、それ以外のオペレーションや安全な方法などいろいろ考えられたはずで、実に残念なやらかし事案だと思わずにはいられません。
一方、ユーザ側においてもさくらに限らず何でもベンダー任せにしてしまうとこういう一方的な怒りと悲しみを持つだけという状況が発生しうるので、常にあらゆるリスク分析とベンダーに任せるのであれば日常的なコミュニケーションは大事にしておかないといけないのではないかと感じます。
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